What's みちのきち

授業の合間、友人とのおしゃべりの合間に、ふと本を手にとってみる。ぱらぱらとページをめくってみる。
そんなささやかな時間をきっかけに、知らなかったことを知る喜び、知っていると思っていたことにまだ知らないことがあったことを見つける驚き、
知ってしまったがゆえに知る悲しみ、怒り・・・いろいろな想いや考えを生み出してほしい。
いろいろな価値観が存在する現代だからこそ、この空間で自分の核を見つけてほしい。
そして、柔軟に、おおらかに、いろいろな価値観を認められる人になってほしい。
なかには本は好きではないという人もいるでしょう。しかし、そのような人にも、みちのきちを訪れてほしいのです。
スマートフォンやタブレットで見るのとは違う景色がきっとそこにあるはずです。

「みちのきち」という名前に込めた想い

本を読むことは、好きなことや興味のあることを発見することもあれば、人間の狡さや愚かさを目の当たりにすることもあるでしょう。ときに、孤独を感じることもあるでしょう。しかし、だからこそ得られるものがたくさんあると私たちは考えています。未知のことを既知に変える基地、人生(道)の迷いに向き合う基地、機知に富んだ会話のできる大人になれるような本がある基地、「みちのきち」にはそのような意味と願いを込めました。ここが、みなさんの心の基地となり、戻りたい場所、いつでも立ち寄りたい場所となりますように。そして、みなさんの未来の架け橋となる本との出会いがありますように。

みちのきちへようこそ
國學院大學副学長/神道文化学部教授 石井 研士 國學院大學副学長/神道文化学部教授 石井 研士

「みちのきち」プロジェクトは、みなさんに「本」というメディアにもっと触れてほしいという思いからスタートしました。
若い世代の本離れが叫ばれるのは今に始まったことではありませんが、近年、SNSの席巻により、その傾向はますます強まっているようです。
文系大学である本学も例外ではありません。在学生を対象としたアンケートでは、一週間のうち一冊も本を読まない学生が3割を超えるという結果になりました。「読む」ということだけで言えば、今は電子書籍もあり、紙の本である必要はないのかもしれません。
しかし、私たちは学生のうちにもっと「紙の本」を手にとってもらいたいと思っています。手にとった本の重さ、インクのにおい、ページをめくる感触が呼び起こす確かな記憶こそが、これからの皆さんの人生の糧になると信じているからです。「みちのきち」に置く本の選書には、ブックディレクターである幅允孝氏のお力を借りました。
授業や図書館で触れるよりもう少し身近で、ちょっとした空き時間でも楽しんでもらえるような本をたくさん用意しています。「みちのきち」で過ごす時間の中でみなさんは、きっと、心に響く多くの本と出会うことでしょう。本と出会うことで、みなさんの人生がいっそう豊かに広がりを持ったものになることを願ってやみません。

BOOK LIST

昭和の店に惹かれる理由/MOYASHIMON1/鮨12ヶ月/リトル・フォレスト1/Inside Chef’s Fridges, Europe/一日一葉/アートオブ シンプルフード

奇界遺産2/ナチュラル・ファッション/島秀雄の世界旅行 1936-1937/数学する身体/Joseph Cornell: Master of Dreams/マダガスカルへ写真を撮りに行く/Alpes Alpi Alpen Alps/センス・オブ・ワンダー

そらみみ植物園/くらしのこよみ/ヨーコさんの”言葉”/そらをかついで/断片的なものの社会学/礼儀作法入門/美しいもの

リトルボーイ―爆発する日本のサブカルチャー・アート/それでも日本人は「戦争」を選んだ/ひろしま/陰翳礼讃/ぼおるぺん古事記(一)天の巻/日本の歴史をよみなおす(全)/ぼおるぺん古事記(二)地の巻

火の鳥1/James Turrell/よあけ/神饌/祈り/伊勢神宮/アイヌ神謡集/代表的日本人

東京百景/文学少女の友/愛蔵版 モモ/海色の壜/プリズン・ブック・クラブ/せいめいのれきし/本の魔法/言葉はこうして生き残った/10:04

VICTORY JOURNAL/呼吸の本/内臓とこころ/Act of Love/日本のマラソンはなぜ弱くなったか/あわいの力/フットボリスタ主義2

※みちのきちにある本の一部です

このプロジェクトに携わってくださった
三人のスペシャリスト

幅允孝

経歴
BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。未知なる本を手にしてもらう機会をつくるため本と異業種を結びつける売場や、ライブラリーの制作をしている。代表的な場所として、国立新美術館「SOUVENIR FROM TOKYO」や「CIBONE」、「京都市動物園図書室」「ワコールスタディホール京都」「ISETAN The Japan Store Kuala Lumpur」書籍フロアなど。また、DESIGNTIDE TOKYOのディレクター(2008年〜2012年)や愛知県立芸術大学美術学部デザイン・工芸科デザイン専攻で非常勤講師も務めるなど「デザイン」好き。著書に『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』(晶文社)、『幅書店の88冊』(マガジンハウス)、『つかう本』(ポプラ社)。www.bach-inc.com

幅氏からのメッセージ
幅氏からのメッセージ

「格好よい大人になってください」

若い時にいろんな本を手に取るということは、とてもお勧めできる時間の潰し方です。
それが紙の本であれ、電子書籍であれ、「本というパッケージ」に書かれている情報は、責任の所在がはっきりしています。それは、誰々が、いつ、どういう論拠で書いたのが明快です。また、「本というパッケージ」の特徴として、何度も練られ、推敲が繰り返された情報だという点も挙げられます。すぐに消去し、更新できる昨今の情報と違い、本の書き直しは大変なもの。回収し、印刷や製本をし直すのは、コストも労力もかかります。つまり、校了日に持てるベストを注ぎ込もうとした奇妙な怨念と奥行きみたいなものを、「本というパッケージ」は自然にまとっている気がします。
記憶の外部保存装置が充実すれば、「生き字引き」のような人間はいなくなると少し前までは皆が考えましたが、結局量産されたのは短絡的な答えばかりを瞬時に示す、入れ替え可能な主体ばかり。そんな中、本がまとう怨念みたいなものに触れることは、誰にも譲れない確固とした自分をつくりあげていくガソリンになると僕は思っています。本を血肉化することができれば。
試験やミーティングなど何かの「必要」のためではなく、答えを求めず、何にも期待せず本を読むことはとても贅沢な愉楽です。そのよろこびを知っている格好よい大人になっていってください、ね。

建築家の一冊
建築家の一冊

建築家 谷尻誠

「はじめて考えるときのように」
野矢茂樹 文/植田真 絵(PHP研究所)

「考える」とはどういうことか?ものごとの枠組みや考えるためのことばなど「考える」ことの根幹について問いかけながら、「考える」ということについて優しい挿絵とともに丁寧に解説されています。読むと初心にかえることができる、そんな本です。

正直に言うと、僕は本を読むのが嫌いでした。大人になるまで、一冊の本を読み切った事がありませんでした。音色って言葉が出てくると、音の色は何色なんだろうと考えてしまい、前に進まなかったのです。いちいち考えてしまうため、本のストーリーを読み込むどころか、気になる要素が増えていくばかりでした。でも大人になって初めて本を読み切ったとき、その魅力をやっと知ることが出来ました。文字という情報が、想像を増幅させてくれることで、建築という形をつくることも可能にしてくれましたし、いまでは言葉がないと建築がつくれない自分がいます。

みちのきちは、そんなきっかけをつくるために考えた場所です。この場所を訪れてくれた、あなたの未知へのきかっけの場所になれば嬉しく思います。

プロフィール

1974年広島生まれ。2000年建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE設立。2014年より吉田愛と共宰。
広島・東京の2ヵ所を拠点に、住宅、商業空間を始めとする様々な分野で、国内外で多数のプロジェクトを手がける傍ら、大阪芸術大学准教授なども勤める。著書に「談談妄想」「1000%の建築」がある。
https://www.suppose.jp/

デザイナーの一冊
デザイナーの一冊

グラフィックデザイナー 木住野彰悟

「ティファニーのテーブルマナー」
W.ホービング著(鹿島出版会)

仕事柄、ヴィジュアルのキレイな本をたくさん見る機会があり、本を選ぶ時も「美しいかどうか」という視点で見ることが多くなります。まずこのような事を本としてまとめること自体がとても気が利いていて、品が良いなと感じました。また、内容とイラストの相性が抜群に良く、情報としても洒落が利いていてとても良いと思います。

皆さんがステキなものに触れるきっかけになればと思い紹介します。

ロゴは、この素敵な場所でなければ出来ない、素敵な体験を、この場所だけではなく、「みちのきち」に来たことがない人に伝える役割を担っています。みちのきちではたくさんの本が、木を彩る葉っぱのようにたくさんの情報として存在しています。

この情報に触れる学生さんの、うきうきした姿、ドキドキする気持ちなど楽しそうな雰囲気を感じられるようにロゴをデザインしました。

プロフィール

グラフィックデザイナー 6D代表
企業や商品のブランディング・VI・サイン計画等を数多く手がける。主な仕事にKIRIN「ブルワリーオーナーズクラブ」のアートディレクション、JAマインズのブランディング、柏の葉スマートシティのサイン計画がある。
http://www.6d-k.com/