「 言霊の幸はふ国ぞ、響く言葉をインプットせよ 」

今回のおススメ本紹介者は神道文化学部長の武田秀章教授です。

タイトル 著者 出版社
Kojiki グスタフ・ヘルト訳 コロンビア大学出版局
ぼおるぺん古事記 こうの史代 平凡社
口訳万葉集 折口信夫 岩波現代文庫
伊勢神宮 浄闇 宮澤正明 小学館
宣長にまねぶ 吉田悦之 致知出版社
ニーベルングの指環教養養講座―読む・聴く・観る! リング・ワールドへの扉― 山崎太郎 アルテスパブリッシング
東日本大震災 神社・祭りー被災の記録と復興― 神社新報社

Kojiki


武田先生の一言
天照大御神が、「マイティ・スピリット・ヘイブン・シャイニング」。須佐之男命が「ラッシング・ラギング・マン」。大国主神が「ザ・スピリット・グレート・ランド・マスター」倭建命が「ヤマト・ブレーブ」…。本書は最新の『古事記』英訳本です。異なる言語で表現された『古事記』の世界。言葉が違うと、これほどの別世界になってしまうとは…。本居宣長はこう言いました。「言葉と心を切り離すことはできない」と。異なる文化からの視点によって、『古事記』の姿がいかに違って見えてくることか。
『古事記』講読の際、本書を座右に置くことをお奨めします。きっと様々な発見があることでしょう。

 

ぼおるぺん古事記


武田先生の一言
原文表記(漢字仮名混じり文)による『古事記』』上巻の漫画化。原典に最も忠実な『古事記』漫画です。ほのぼのとした神々のキャラクター・デザインが秀逸。そもそも『古事記』は、日本の「物語の原型」です。こうの氏の名作『この世界の片隅に』も、こうした「物語の原型」から培われた作品にほかなりません。
いま求められているは、『古事記』を現代に向けて発信することです。本書は、その見事な「お手本」の一つといえましょう。

 

口訳万葉集


武田先生の一言
大学1年次の夏休み、中公文庫版の本書を携え、山之辺の道や飛鳥路を歩き回りました。
馬齢を重ねた今、『万葉集』の世界が愈々懐かしくなっています。本書は、『万葉集』の史上はじめての口語全訳です。本学の生んだ碩学、折口信夫。その若年の無謀なチャレンジが、『万葉集』享受の新たなステージを切り開くこととなりました。
「活かせ古典を時代(とき)の勘…」。折口信夫作詞、国大音頭の一節が胸に響きます。

 

伊勢神宮 浄闇


武田先生の一言
平成5年、平成25年と、伊勢の神宮の式年遷宮「遷御の儀」にご奉仕させていただきまた。
遷御の夜の、あの「闇の深さ」と「全き静寂」。今なお心に深く刻まれています。宮澤氏の写真集は、あの夜の曰く言い難い経験を、しみじみと思い出させてくれました。
伊勢の神宮を「現代に生きる神話」と語る宮澤氏。同じく宮澤氏の写真集『遷宮』、『伊勢神宮』もお奨めです。

 

宣長にまねぶ


武田先生の一言
著者は宣長研究者で、本居宣長記念館館長を務める吉田悦之氏。
一介の青年に過ぎなかった宣長は、いかに志を立て、逆境を乗り越え、不撓不屈、『古事記』復活の大業を成就するに至ったのか。
著者は徹底的なリサーチを経て、人間宣長の生々しい「成長のドラマ」に光を当てます。
著者が熱く語る通り、宣長の生涯には、「人生の目標達成」のための無数のヒントが隠されています。
さあ、皆さんも、宣長に「まね」びましょう

 

ニーベルングの指環教養養講座―読む・聴く・観る! リング・ワールドへの扉


武田先生の一言
ワーグナー『ニーベルングの指環』の壮大な音楽と物語に、ずっと魅了されてきました。
本書は『ニーベルングの指環』を、人間のあらゆる営みに関わる総合的な世界観として読み解いていきます。
とりわけ「同時代との交響」の視点が「目から鱗」でした。「ラインの黄金」とバルザック、「神々の黄昏」とドストエフスキー…。
時代への深刻な懐疑、新時代への一縷の希望。本書の大尾、いわゆる「救済の動機」の新解釈には、深く心を揺さぶられました、
神話を求めたのは何も古代人だけではありません。『ニーベルングの指環』が、19世紀の「新しい神話創造」にほかならなかった所以が、つくづくと実感できます。

 

東日本大震災 神社・祭りー被災の記録と復興―

武田先生の一言
平成二十三年三月十一日の東日本大震災は、日本社会に深甚な衝撃を与えました。
本書は、神社・神職の「被災から復興へ」の動きを伝える浩瀚なドキュメントです。神道文化学部の数多くの教員が、編纂執筆に携わりました。
東日本大震災を経て、日本人の心はどう変わったのでしょうか。また神社は、どのような役割を求めるようになったのでしょうか。
本書は、そうしたことを、深く考えさてくれます。
神社新報創刊七十周年記念の非売品。ぜひ図書館で熟読を。